水谷八重子、「きれいなのにもったいない」と拾ったが…「市川雷蔵映画祭 刹那のきらめき」トークショー

「市川雷蔵映画祭 刹那のきらめき」順次公開

銀幕のスター・市川雷蔵の映画デビュー70 周年を記念した映画祭「市川雷蔵映画祭 刹那のきらめき」が角川シネマ有楽町にて公開中、2 月よりシネ・ヌーヴォ(大阪)ほかにて順次公開。その公開を記念し、去る1 月 12 日(日)、4作品で共演した女優の水谷八重子のトークショーが開催されました。

雷蔵との思い出を尋ねられた水谷は、「橋幸夫さんと『おけさ唄えば』でも共演しましたが、橋さんが売り出し中で、撮影の合間にインタビュー取材して、ご飯も食べられないほど全然休む暇がない。その分、雷蔵さんと私はのんびりさせていただきました。(雷蔵は橋を見て) 『まだ 10 代だろ。大変だろうなあ、よく頑張っているなあ』と感心して、雷蔵さんがご自分のメイクさんを橋さんにつきっきりで付けて、ご自分のお子さんのように面倒を見ていらして、男性の師匠も素敵だなと思いました」振り返りました。

 

そんな雷蔵を「優しいけど悪い人でいたずらっ子」と表現した水谷は、次のようにエピソードを披露しました。

 

 「立ち回りで剣友会の方々と合わせている時、突然一人だけバツンと斬ったりして(笑)、それも相手の帯の間に刀を入れたりして、立ち回りがものすごくお上手でした。やられた方はびっくりしますから(笑)、そういういたずらはしょっちゅうしていらっしゃいました」

 

 「あと、野球が好きで、暇があるとバットを振っていたり、早起きして、撮影の前に野球の試合をやっていました」

 

雷蔵の魅力について聞かれると、「雷蔵さんは足がきれい。足が長くてバランスが最高でした。今度、雷蔵さんの映画をご覧になる時は、足に注目して見てください」とアピールしました。

 

『新源氏物語』4K デジタル修復版の話題が上ると、「(光源氏役で)ファッションショーのようにいろんな色の織物をお召しになっていましたが、どの衣装も憎らしいほど全部似合っちゃう。どのカットから撮ってもきれいでしたね」と目を輝かせました。

 

演舞場での水谷の舞台を、突然、雷蔵が観にきた時のこと。

 

 「楽屋に遊びにいらして、『帰りに何か食べに行こうか』という話になって、『着替えるから待ってて』と、屏風に隠れて衣装を脱いで G パンに着替えていたら、(雷蔵の)声が聞こえなくなって、 『らいちゃん、どこに行った?』って言ったら、 『ここにいるよ』って私の後ろにいて、お尻も全部見られちゃったの(笑)。そういういたずらな面がありましたね」

 

雷蔵はお酒も強かったそう。

 

「勝新太郎さんは宴会でいつも一人ベロベロに酔っぱらって、らいちゃんはまるで証券マンのように平気な顔をして飲んでいるから、それが許せないってことで、勝さんに『1 回、雷蔵が酔いつぶれたところを見たいから付き合って』と言われ、一緒に飲みに行きました。アルコール度数が強いいろんな種類のお酒を混ぜたお酒を作って渡してもらったら、雷蔵さんはその恐ろしいお酒を 4〜5 杯飲んでも全く変わらなかった。かっちゃん(勝)は薄い水割りを飲んだのに呂律が回らないほどベロベロになって倒れて、悔しがっていました。二人は正反対なのが良かったですね」

 

改めて雷蔵の魅力を聞かれた水谷は、「美しいのに、普段は暴れん坊でやんちゃ坊主。そのギャップがかわいい」と目を細め、「いつまでもこの若さ、美しさで居続けるために、神様が早く連れて行ったのかな」としみじみ。

 

最後に、雷蔵のファンに申し訳ないことをしたという水谷。

 

 「最後、舞台にお出になる予定で、ポスターの写真撮りも終わっていたんです。でも、病気が発覚して、舞台ではなく、後に残る映画に出ることに決まった」と明かし、「誰もその事情を知らないから、舞台の宣伝の人が悔しがって、私の前で雷蔵さんの写真を捨てていったんです。私は『きれいなのにもったいない』とそれを拾って、幻の舞台の写真を大事に持っていましたが、引っ越しの時に無くしちゃった」と告白。

 

「その写真を焼き増しして、こんな時にみなさんに配ることができたらどれだけ良かったかなって。本当に申し訳ないなとつくづく思っています。これからは物を無くさないようにします」と残念そうに来場者に謝っていました。

水谷八重子とは

父は 14 代目守田勘弥、母は初代 水谷八重子。1955 年、16 歳で新派・歌舞伎座で初舞台。同月、ビクターレコードからジャズ歌手としてデビュー。以後、映画『青い山脈』『座頭市物語』『悪名』などに出演。『妖刀物語 花の吉原百人斬り』で NHK最優秀助演女優賞を受賞。出演舞台『三婆』が 2 月 1 日から 9 日まで新橋演舞場にて上演予定。

「市川雷蔵映画祭 刹那のきらめき」は角川シネマ有楽町にて公開中、2 月よりシネ・ヌーヴォ(大阪)ほかにて順次公開。