「闇は彼を飲み込んだ」『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』

『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』9月20日公開

世界的ファッションデザイナー、ジョン・ガリアーノのドキュメンタリー『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』が、9月20日(金)より全国公開。このたび、各界のファッション識者からコメントが寄せられました。

●北村道子(スタイリスト)

「彼ほど人間である属性にコミットしているファッションクリエーターは稀なのではないか。そこが彼の命の源なのだろう」

 

●シトウレイ(ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト)

「2011年の冬のパリのファッションウィークの現場の空気は今でも鮮明に覚えてる。いつにない緊張感と不穏さと信じられない位に多くの人が漂うあの会場(コレクション会場で私が警察の出動をみたのはこの時が初めて)。一触即発の雰囲気で、何が起こっても仕方ないカオス・・・飛び交っている彼についてのさまざまな憶測、怒り、擁護の言葉と義憤心、打倒のコール、下世話なヤジ、尾ひれのついた陰謀論・・・の中でコレクションスナップを撮ってたあの日。この日一番聞いたフレーズは「分からない」でした。当惑気味に、哀し気に、憤り気味に、いろんな感情がこもってた。ブラックボックスの中に入ってたあの日の真実が、ようやくクリアになりました」

 

●takamama(Fashion film creator)

「アルコール・常用薬・仕事に依存し、差別発言の動画流出をきっかけに煌びやかな世界から奈落へ堕ちていくガリアーノの人生。本人も認識していなかったインシデントと向き合い、贖罪を続けることで天才は再び息を吹き返していくわけですが、計り知れないその険しい道のりは見ていてとても心苦しかったです。デザイナーを目指すきっかけの一つになっていたアベル・ガンス「ナポレオン」のシーンを本編の節々にレイヤードしていく表現も印象的でした」

 

●田中杏子(NuméroTOKYO 編集長)

「モード界がお祭り騒ぎのようだった当時、才能溢れる繊細なデザイナーやクリエイターたちはみな、精神的かつフィジカル的なサポートが必要でした。ジョン・ガリアーノのモード界における成功と転落の裏に潜む本質的な問題とは。私たちはこの映画から、最も重要なその部分を学

ぶべきだと痛感します」

 

●TOMO KOIZUMI(デザイナー)

「1人の天才がファッションの歴史を塗り替える瞬間を、我々が確かに観ていたのだと思い出させられる作品。クリエイターとしての自分が1番影響を受けた人物の栄枯の物語に、心を揺さぶられずには観れなかった」

 

●ドリアン・ロロブリジーダ(ドラァグクイーン )

「世界に魔法をかけた、天才ジョン・ガリアーノ。アタシがドラァグクイーンを目指し始めた頃、オートクチュール特集が掲載されたファッション雑誌を買う理由は、いつだってガリアーノでした。世界中のドラァグクイーンが彼の作り出す世界に魅せられ、それぞれのスタイルの中にガリアーノ的な“キャムプ”や“ハイアンドロー”を見出そうとやっきになっていたことを思い出します。そんな彼が得た成功や栄光、そして破綻と再生。これからのガリアーノは、世界にどんな魔法をかけてくれるのかしら。楽しみだわ」

 

●西村宏堂(アーティスト・僧侶)

「天才デザイナー、ガリアーノの栄光と影。世界を魅了した美と衝撃的な差別発言。計り知れないプレッシャーに耐えた彼を愛し、許せるか、あなたの心に問いかけます」

 

●平芳裕子(神戸大学大学院准教授)

「天才ファッションデザイナー、ジョン・ガリアーノの波瀾万丈の半生を描いたファッションドキュメンタリーで、過去の貴重なコレクション映像の数々を堪能しました。一方で、ガリアーノを取り巻いている当時のファッション界の様子も興味深く、ブランド帝国を築いたベルナール・アルノーの姿やブランド買収で変質していく業界模様も注目されます。激動の世紀転換期をリアルタイムで知らない世代にこそ見てほしい映画で

す」

 

●村上要(WWDJAPAN 編集長)

「私たちに現実から逃避させてくれるような素晴らしいファッションを見せてくれたジョン・ガリアーノが、酒や薬物、そして仕事に逃避した結果、私たちを傷つけた数奇な運命を膨大なアーカイブ映像と共に辿る名作です。ジョン・ガリアーノは、「拡大」、もしかすると「膨張」したファッション業界の仕掛け人でありながら、犠牲者でもあったのかもしれません。それでもなお、第一線で活躍し続けるガリアーノに敬意を表します」

 

●山縣良和(ファッションデザイナー)

「これはちょうど二十年前、純粋にファッションの源流を追い求めていた僕自身が、彼のスタジオで目の当たりにした、人間の限界を優に超える所業に感服すると同時に恐れ慄いたものそのものだ。目まぐるしいほどの神懸かった創造性の背後には、愛すべき天才デザイナーの心の奥底に沈殿した狂気や孤独、悲壮感が映像から終始漂う。我々に自省を迫り、社会に内在する複雑な問題を突きつける未来に残すべき稀有なドキュメンタリー作品だ」

 

●渡辺三津子(ファッションジャーナリスト)

「二面性をもつ人間でありデザイナー、ジョン・ガリアーノ。彼は、光と影から生まれるファッションの世界で命を得た。あの時代、急激な成長を遂げたファッション界は絢爛たる光が輝きを増し、狂騒のなかで影も深くなってゆく。ガリアーノはそれに最も共振し、天賦の才を花開かせた。ショーはもちろんのこと、フィナーレに登場する彼自身が壮大なスペクタクルだった。闇は彼を飲み込んだが、“主人が去った別の家(メゾン)”で、服ともう一度向き合う暁光を仰ぐ。そこには、きっと、彼を包み込む柔らかな光があったことを願う」

ガリアーノ逮捕・・・背景に何があったのか?

絶頂期だった 2011年2月、ショッキングなニュースが瞬く間に全世界へと流れます。クリスチャン・ディオールのデザイナーとして活躍していたジョン・ガリアーノの逮捕。反ユダヤ主義的暴言を吐く動画が拡散、その後有罪となり、ブランドから解雇され、文字通り“すべて”を失いました。そんな事件から13年たった今、ガリアーノ本人がカメラの前に座り、「洗いざらい話す」と語る、ドキュメンタリー映画です。

 

監督は、『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したケヴィン・マクドナルド。ガリアーノの人間性にも鋭く踏み込んでいます。そして最大のミステリー「彼の暴言の背景には何があったのか?」にも斬りこんでいきます。

 

 

年32回のショーを抱え、超人的な仕事量をこなしながら、相次ぐ大切な人の死、さらにアルコール依存症が加速。「ゆっくりと死に向かっていた」と自ら暴露する、その闇とは・・・?

 

『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』は、9月20日(金)より全国公開。

 

[作品情報]

『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』

原題:High & Low -John Galliano

監督・プロデューサー:ケヴィン・マクドナルド (『モーリタニアン 黒塗りの記録』)

出演:ジョン・ガリアーノ ケイト・モス シドニー・トレダノ ナオミ・キャンベル ペネロペ・クルス シャーリーズ・セロン アナ・ウィンター エドワード・エニンフル ベルナール・アルノー

2023年/イギリス/英語・仏語/116 分/カラー/ビスタ/

字幕翻訳:チオキ真理

© 2023 KGB Films JG Ltd 

提供:木下グループ 

配給:キノフィルムズ 

公式 HP:jg-movie.com