津軽塗のテルミンは宇宙からのメッセージ⁉ 日本の伝統工芸を世界的デザイナーの手で世界に「Craft x Tech」at「kudan house(九段ハウス)」

「Craft x Tech」at「kudan house(九段ハウス)」

日本の伝統工芸と国際的なアーチストがタッグを組み、工芸の魅力を世界に発信しようとするプロジェクト「Craft x Tech」が、5月23日から25日に、東京「kudan house(九段ハウス)」で初披露。プレス内覧に参加してきました。

第一回は、東北6県の6産地とクリエイターによるコラボレーションを実現。参加した工芸産地は、津軽塗(青森県)、川連漆器 (秋田県)、南部鉄器 (岩手県)、仙台箪笥(宮城県)、置賜紬(山形県)、会津本郷焼(福島県)で、Sabine Marcelis、Azusa Murakami and Alexander Groves(Studio SWINE)、Ini Archibong、Michael Young、落合陽一、吉本英樹の6組のクリエイターがタッグを組みました。また、キュレーショナルディレクターとしてミラノのMaria Cristina Dideroが参加しました。

 

本プロジェクトは、6月にスイスのバーゼルで開催される「Design Miami/Basel」、9月にはイギリスのロンドンで開催される「London Design Festival」に出展されます。

Sabine Marcelis collaborating with Kawatsura-Shikki

「川連漆器のプロセスは、時間と忍耐と、高度な技術を要します。漆塗りの仕上がりの面は非常に豊かで光沢があり、濃い色味を持ちます。これは私がよく使用するガラスや樹脂成形の製造過程とは大きく異なります。漆の特性を活かしてどのような効果を得ることができるかを分析し、自然光が表面を反射する際に溶け込むように、丸みを帯びたボリュームのある形状を作りました」(サビーヌ・マルセリス)

 

栃の木など木を積層して制作。15回塗り重ねているとのことで、つなぎ目のない刷毛塗りに苦心したそう。深くて吸い込まれる紫がかった彩色が魅力的でした。

Azusa Murakami + Alexander Groves (Studio SWINE) collaborating with Sendai-Tansu

「私たちのデザインは、浮世絵への愛から生まれました。浮世絵には、日本の室内がよく描かれます。等角透視図で描かれた屋内、畳が織りなす力強い格子模様、月見のための縁側、大胆な格子柄の着物 — これらに着想を得て、私たちは、浮世絵に見られる大胆な図案を具現化すること、すなわち、まるで浮世絵から飛び出したかのような、非現実的に近い性質を持つオブジェクトを作り出すことを目指しました」(村上あずさ + アレキサンダー・グローブス(スタジオスワイン))

 

本来、凝った金具の装飾が特徴の仙台箪笥ですが、今回は障子や畳の和室に見合うシンプルな装飾。限られた制作期間で最大限の工夫を凝らしたとのこと。搬入も初日の朝だったそう。取っ手も目立たない金具を使用して、引き出しや開き扉など様々な収納を実現しています。

Ini Archibong collaborating with Tsugaru-Nuri

「世界最古の電子楽器である「テルミン」を、伝統的な津軽塗の手法である唐塗と紋紗塗を施したスカルプチャーによって再構築しました。艶の美しいスカルプチャーに手を触れることで、内包されたシンセサイザーがコントロールされ、独特の電子音を奏でます」(イニ・アーキボン)

 

この「アーティファクト7」という作品は、「津軽塗の技術は、実は太古に宇宙人から教示されたものだった。その際に、コミュニケーション手段として伝承された・・・」というコンセプトだそう。イニが工房を訪れたときに沸いたインスピレーションを元にしており、日本人にはなかなか思いつかないアイデアが興味深かったです。

Yoichi Ochiai collaborating with Oitama-Tsumugi

「伸縮可能なフレームとテンセグリティを活用したバランスの取れたフレーム設計を用いて、折りたたみ可能で持ち運びやすい茶室を構築します。茶室の各部分をAIで再構築し、デジタルネイチャーの茶具を置賜紬のオントロジーで構築し直すことを考えました。さらに空間を認識し、その情報を音や映像、光に変換する装置の組み込みによって計算機自然を出現させます」(落合陽一)

 

折りたたみ式で、柱が一切ない茶室。天板と床板を4本のワイヤーと中央の木部で絶妙のバランスで組み上げています。赤の置賜紬、床も反射して光を取り込める仕組み。

Michael Young collaborating with Nambu-Tekki

「南部鉄器に関して最初に印象的だったのは、材料の質感と、手でスタンプを押すように桜模様を施す方法でした。3Dの技術を用いることで、樹脂にテクスチャ・マッピングを行い、手作業では複雑すぎる質感を生み出しました。私は拡張性のあるものを作りたいと思い、数十年前に研究したモジュール方式に新鮮な視点で立ち返りました。この形は、構成単位となる部品の数を増やすことにより、機能的な構造を作り出そうと試みる中で生まれました。色は伝統的な技法によるものです」(マイケル・ヤング)

 

壁面に掲げられた鉄のパーツをモジュール式に組み合わせることで様々な造形を実現。真鍮の天板を載せることでテーブルに。

Hideki Yoshimoto collaborating with Aizu-Hongo-Yaki

「陶芸に技術的に新しい視点を導入するのは簡単ではありませんでした。現代的な造形技術や、設計手法を取り入れた幾つかの案のトライ&エラーを重ねた結果、やはりこの陶器の美しい表情を中心にしたいという原点に立ち戻りました。独特の釉薬による流星や天の川を思わせるような情景が、金属とのハーモニーにより、堂々としたスカルプチャーの中に表現されています」(吉本英樹)

 

試行錯誤の末、釉薬が生み出す情景を生かした照明に辿り着いたそう。

Tangent collaborating with Takashi Digitec

「『yomosugara』は現代におけるモダンな和の空間での使用を念頭に、かつての和風照明の イメージにとらわれることなく、和の照明の概念を再定義します。日本の原風景や日本人の自然に対する考え方にフォーカスすることで 生み出されました。私たちの考える日本らしい灯りは、夕暮れから夜にうつりかわる薄暮の時間の薄明りや、夜の川に映る月明りといった、日本人が古くから親しんできた自然と共に ある灯りです。海外の装飾的で主張の強い照明とは異なり、自然に寄り添ったデザインは日 本的な心安らぐ夜の灯りとして、やわらかな和の空気を醸し出します」(Tangent)

 

 

[展示概要]

会期:5月23日(木)〜5月25日(土) 

会場:kudan house 東京都千代田区九段北 1-15-9 

https://craft-x-tech-exhibition2024.peatix.com 

オフィシャルサイト:https://www.craft-x-tech.com/ 

Instagram:https://www.instagram.com/craft.x.tech/

 

●クラフトテック推進協議会   構成メンバー

理事長 佐藤慶太/株式会社佐藤商事 代表取締役社長

理事  大沼信一/University College of London 教授

理事  後藤研二/株式会社ミライニホンベンチャーズ 代表取締役 

理事  佐藤俊紀/株式会社ハーストデジタルジャパン コンテンツ本部 編集局長

発起人 吉本英樹 / Tangent 代表・東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授 

事務局 上野建太郎 / メリディアンパートナーズ株式会社 代表取締役社長

 

●アドバイザー

神崎亮平/東京大学 名誉教授・先端科学技術研究センター シニアリサーチフェロー 

木田隆子 / ELLE DECOR JAPAN ブランドディレクター

桐山登士樹 / デザインディレクター・TRUNK 代表取締役社長

岩井美恵子 / 国立工芸館 工芸課長

Benjamin de Haan / デザインコンサルタント