タイアップは受けない!日本発新デザイン専門誌「Ilmm」(アイエルエムエム)創刊記念企画展

企画展「Design Journal #0」開催

デザイン専門誌「Ilmm」(アイエルエムエム)が4月1日創刊、5月10日に初の企画展「Design Journal #0 TALK 1」が、東京・目黒のLICHTで開催されました。

「Ilmm」は、2024年春にスタートした新しいデザインの専門誌。世界各国のデザイナーによるプロダクトやインテリアを軸に、建築やグラフィックなどを含めた広範な領域を取材対象としており、充実したロングインタビューと豊富なビジュアルを中心に誌面が構成されています。

 

創刊号「Ilmm #0」には、フォルマファンタズマ、サビーヌ・マルセリス、コンスタンティン・グルチッチ、セシリエ・マンツのインタビュー記事のほか、三澤遥による作品などが掲載されています。

「知られていないことを伝えていく」という原点に立ち返る

5月10日の「TALK1」には、「Ilmm」の編集チームである4名、土田貴宏、吉田裕美佳、石野田輝旭、山本考志が登壇。「『Ilmm』はこんな雑誌です」をテーマにリラックスした雰囲気で議論が交わされました。

 

創刊のキッカケは、ライターとして活動する土田が海外のデザイナーと接したとき「どうして日本にはデザインの雑誌がないのか?」と訊かれたこと。そこで土田が編集を務め、インテリアデザインを中心に活動するFLOOATの石野田と吉田、ArtekやVitraを扱う山本に声が掛かります。

 

4人は旧知の仲で互いの好みも熟知しており、それぞれが好きなモノを少しずつ出し合って集めれば自然にコンテンツが出来るだろうと考えて作り始めたものの、インテリアのデザインだけの本にはしたくなかったといいます。

 

山本が「ベルリンのデザイン文化が好きで、巻頭に建築家ゴンザレス・ハーゼを取り上げてくれたのは嬉しかった。日本ではまだ余り知られていないことを紹介するからこそ意義がある」とこの雑誌の狙いを語ると、石野田は、「ネットの時代に、それを敢えて紙でやっていく。4人が違うベクトル、違う基準で人を選んでいくことで多様なアイデアや情報を伝えられる」と企画のプロセスを明かします。

 

「今の自分に足りないところがあると思っていたとき、『Ilmm』の語源が『I Love Making Mistake』だと聞いてハッとした」と吉田が言えば、石野田も「我々みたいな小さなクラブでも、失敗をおそれずにチャレンジしようというポジティブなメッセージでもあります」と意気込みを語ります。

「位置情報」が大事

4人はとくに編集会議のようなことは行わず、共通して面白そうだと思うものを取り上げるといいます。「あまり社会で通用しない作り方ですけれど」と土田は苦笑い。

 

取材源については、山本が、「『Ilmm』は年二回発刊ですが、常にロングリストを更新していなければならない。そのためには、気になるデザイナーのInstagramからの情報収集も欠かせませんが、サローネ等に実際足を運ぶことが大切だと思っています」と語ると、土田は「情報を見るだけならメールでもできる。最近はデザイナー自身がInstagramで情報発信するのでフォルダ分けしながらアーカイブすることができますが、それ以上に、実際に『見る』こと、『位置情報』が大事です」と共感します。

 

インタビュー記事も異例の長文にしている理由について、土田は次のようにコメントしています。

 

「普通は1000文字からせいぜい2000文字のところ、『Ilmm』では5000文字ぐらいでライターに依頼します。これほど長くすると、どうしても掘り下げなくてはならない。すると、日本でよく知られているデザイナーであっても、これまで知られていなかったところまで出てくるんです」

 

ビジュアルについても然りで、「ページ数があれば、ビジュアルも豊富に掲載しなくてはならなくなります。撮り下ろしの写真は限られているとはいえ、紙ですと大判にできて豊かになります。結果、取材を受けてくれた人も喜んでくれます。インタビューへの意気込みも変わってきます」と狙いを明かします。

雑誌デザインにもポリシーが貫かれる

トーク終盤、「Ilmm」誌のアートディレクター加納大輔が呼ばれ、紙面作りの秘話を明かしました。

 

「『Ilmm』が『偶然街で見つけた人のこと』を語り、その語源『I Love Making Mistake』のとおり、タイトルそれ自体が大文字の「I」と小文字の「L」の間違いを生む造形ふくめて、グリッドも2段組と3段組共存させることで、立体のプロダクトとしてポジティブにミステイクを捉えました」

 

タイアップは受けない。ブランドやモノではなく、人にフォーカス・・・・・・それによって、複数のメーカーを並列して扱うことができ、日本で扱いのないものも紹介できるというわけです。キュレーションして面白いと思ったモノをストレートに伝えていこうとする情熱とそれを実現してしまう行動力に感動したトークイベントでした。

 

 

[作品情報]

『Ilmm ♯0』(アイエルエムエム)

価格:4,620円(4,200円+税)

判型:A4版

頁数:208頁

ISBN:978-4-9913447-0-1

発売日:2024年4月1日

発行:春/秋の年2回発刊予定

言語:日本語

発行元:FLOOAT

URL:www.ilmm.club

Instagram:@ilmm.club

グラフィックデザイン:Daisuke Kano

展示協力:Artek, Flos, Takt, Vitra、Kazumasa Harada