脚本ナシの“ドキュドラマ”手法『FEAST -狂宴-』にみる「メンドーサ・マジック」とは?

『FEAST -狂宴-』3月1日公開

フィリピンの鬼才、ブリランテ・メンドーサ監督最新作『FEAST -狂宴-』が、3月1日、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国公開。公開を控え、ここではメンドーサ・マジックと呼ばれる独特の撮影手法について解説します。

俳優に脚本を渡さず、撮影現場で討議して最高のセリフを見つけていく「ファウンド・ストーリー」と呼ばれるメソッド。ときに人物の声が聞き取れないほど街の雑踏や自然の環境音をすべて採録する臨場感にあふれた「ノイズ主義」の手法。そしてデジタル時代の申し子といえる軽量小型の機材を駆使してスラムの細い路地に手持ちカメラで縦横無尽に入っていく「荒れ・ブレ・ボケ」の撮影美学・・・。

 

メンドーサ・マジックと称されるこうした独自の映画術のもと、数々の傑作・問題作が世に送り出されてきました。徹底したリサーチに始まり、事前のリハーサルもほとんどなく長回しすることによって、リアルな映像を追及。ドキュメンタリーばりの臨場感とともに登場人物たちの心情を映し出す彼の作品は、「ドキュドラマ」にカテゴライズにされることも。

 

そうした撮影手法のみならず、内容も挑戦的。ただのハートフルムービーではなく、ストーリーは次々 と観る者の予想を裏切る展開を見せ、抒情的な映像の奥で大きな疑問符を観客に突きつける本作は、映画的常識に挑むメンドーサ監督からの挑戦であり野心作と言えるでしょう。

「失った者」は「失わせた者」をほんとうに赦せるか?

息子が起こした交通事故の罪を被り、刑務所に収監されていた家族の長の 帰還を祝う宴の準備が進められています。収監されている間、妻と息子は協力しあって家族と家計を守り、亡くなってしまった男の妻と子供たちを引き取り使用人として面倒を見ていました。

 

しかし宴の日が近づくにつれて後ろめたさと悲しみが再びあらわれ、「失った者」と「失わせた者」との間の平穏はかき乱されていきます...。

 

『FEAST -狂宴-』は2024年春、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国公開。

 

[作品情報]

『FEAST -狂宴-』

原題:Apag(英題:FEAST) 

監督:ブリランテ・メンドーサ 

脚本:アリアナ・マルティネス

撮影:ラップ・ラミレス 

美術:ダンテ・メンドーサ 

編集:イサベル・デノガ 

音楽:ジェイク・アベラ 

出演:ココ・マーティン、ジャクリン・ホセ、グラディス・レイエス、リト・ラピッド

2022年/香港/タガログ語、パンパンガ語/104分/シネスコ

後援:フィリピン政府観光省 

配給・宣伝:百道浜ピクチャーズ 

www.m-pictures.net/feast 

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