「TOP コレクション 何が見える?『覗き見る』まなざしの系譜」 展が、東京・恵比寿の東京都写真美術館で、10月15日(日)まで開催中。本稿では、開催に先立ち行われた内覧会の模様をお伝えします。
展示解説は、本企画展を企画した担当学芸員の遠藤みゆきによりおこなわれました。
本展示会は、東京都写真美術館(TOP)所蔵のコレクションから写真史・映像史を横断して展示するもの。会場構成は、(1)18~19世紀に流行したピープショー、(2)顕微鏡や望遠鏡の世界、(3)立体視を可能にしたステレオスコープ、(4)映画前史に発明されたフェナキスティスコープやゾートロープ、キネトスコープなどのほか、(5)現代作家が「覗き見る」 ことからイマジネーションを広げた表現作品で構成されています。
第一章 覗き見る愉しみ
東京都写真美術館所蔵のカメラ・オブスクラ、眼鏡絵、覗き眼鏡、のぞきからくりを展示。18世紀から19世紀にヨーロッパで流行したものから、日本でも江戸時代に愉しまれたものまで、穴から覗き見ることで異世界に没入する特別な視覚体験の原型のような驚きを目の当たりにできます。
第二章 観察する眼
ここでは顕微鏡や望遠鏡にくわえ、写真の登場によってその体験が一瞬の出来事として共有できるようになった作品を紹介しています。
第三章 立体的に見る
ここではステレオスコープ(ビュワー)、ステレオカードなど、まさにいま流行しているVR、ヘッドマウントディスプレイを紹介。さまざまな作品を、本展のためだけに武蔵野美術大学映像学科非常勤講師の橋本典久が制作したステレオビューワーで立体視できます。
第四章 動き出すイメージ
ここでは、静止画から発展して網膜の残像現象を利用した映像装置が並びます。映画の原型とも言える「シネマトグラフ」と、一人ずつ覗いて鑑賞する「キネトスコープ」が併置されているほか、壁に貼られたQRコードを読み取ることでスマートフォンで擬似的に見え方を体験できるような仕掛けもありました。
第五章 「覗き見る」まなざしの先に
最後のコーナーは、「覗き見る」ことによる愉しみと危うさ、カメラの「世界を切り取る」というまざなしの再構成を試みる現代作家の作品が紹介されています。とくに最後の伊藤隆介「オデッサの階段」(2005)は、馬車が階段を下るジオラマをドライビングレコーダーに使うような小型カメラを通じて大型スクリーンに中継投写する作品ですが、『戦艦ポチョムキン』のオデッサの階段にインスパイアされたもので、ホームシアターファンならご存じの映画『アンタッチャブル』の乳母車が階段落ちをも想起させるもの。制作年から20年近くを経たいま、私たちに様々なメッセージを訴えかけてくれることでしょう。
[開催概要]
「TOP コレクション 何が見える?『覗き見る』まなざしの系譜」(TOP Collection: A Genealogy of “Peep Media” and the Gaze)
会期:2023年7月19日(水)~2023年10月15日(日)
10:00-18:00(木・金は 20:00 まで)入館は閉館30分前まで
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は翌平日)
会場:東京都写真美術館3F 展示室
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館
HP:www.topmuseum.jp