建立900年 特別展 「中尊寺金色堂」2024年1月23日より開催
来年2024年に建立900年を迎える中尊寺金色堂。それを記念し、「特別展『中尊寺金色堂』」が東京国立博物館本館特別5室で2024年1月23日(火)〜4月14日(日)に開催されます。このたび、平成館大講堂にて報道発表会が開催され、その具体的な内容が明らかとなりました。
登壇者は、天台宗東北大本山中尊寺貫首(かんす)の奥山元照、東京国立博物館副館長の富田淳、東京国立博物館東洋室主任研究員の児島大輔、NHKメディア総局・展開センターチーフプロデューサーの国見太郎の4名。
冒頭挨拶に立った奥山が「当時東北地方であった2つの戦いによって自身の家族を亡くされた奥州藤原清衡によって建立されたのがこの金色堂。戦いによって失われた尊い命を、敵味方の隔てなく極楽浄土に導きたいという願いがこの輝きには込められていると思います。ひとりでも多くの方に東京国立博物館に足を運んでいただき、清衡の平和への願いを感じ取ってほしい」と述べるのを聞くと、昨今の国際情勢が胸に刺さります。
副館長の富田は、今回の企画の趣旨について次のように説明しました。
「金色堂の棟上げを天治元年・西暦1124年と捉えると、来年で建立900年。本館中央の大階段奥の特別5室を使って展示を行います。藤原清衡自身が中央の棺に眠っているといわれますが、その中央壇上の国宝仏像全11体が揃って寺外で公開されるのは今回が初めて。合わせて、NHKの8K映像で金色堂を原寸大で再現することにより、普段はガラス越しでしか見ることのできない『金色堂の中に入り込む』体験ができます」
知っていたはずの金色堂の最新研究成果がワカル
続いて、主任研究員の児島が、詳細な解説を加えてくれました。
中尊寺金色堂について、鎮護国家や天皇家の長寿を祈る目的で建立された中尊寺の大伽藍の一角にありながら、もともとプライベートなお堂ではなかったかと言われていますと説明。金色堂の特徴として次の4つを挙げました。(1)金箔や螺鈿などの工芸芸術の極みであること、(2)現在は須弥壇(しゅみだん)が3つあるがもともとは中央壇のみがあり周りをぐるぐる回る常行三昧(じょうぎょうざんまい)を行う形式のお堂であること、(3)仏像を安置する仏堂であるのと同時に遺体を安置する廟堂であることです。
中心に据えられた阿弥陀三尊像は、12世紀前半に流行したふっくらとした頬とお腹が特徴。仏像はしばしば移動するものであり、髪型が鎌倉時代に流行したスタイルであるなどの疑問はあるものの、この3体は当初から中央壇にあったと考えられているそうです。
両脇に3体ずつ計6体安置されている地蔵菩薩像は、六道輪廻からの救済を願う往生思想を体現したもの。着物からみて12世紀後半のスタイルだが、2代目基衡の代に作られ、のちに中央に移動してきた可能性もあるといいます。
清衡の娘が建立した白水阿弥陀堂にも影響を与えたとされる躍動感に溢れた二天像は、口を開いた阿形(あぎょう)と口を結んだ吽形(うんぎょう)で対になっています。本来とは左右逆に置かれているとのことで、取り違えたのか意図的なものか不明ですが、もともとは基衡壇にあったものとみられているそうです。
「移動を含めた900年の歴史に敬意を払い、現在中央壇に安置されている仏像11体を展示することにしました。ほんとうは金色堂そのものを展示したいのですが…」
実物大の金色堂の中に入場できるような体験
そんな思いを補うのが、NHKの0.9mmピッチで映し出す8KCG。幅7.2mの大型ディスプレイに、幅約5.5mの金色堂を原寸大で映し出します。
プロデューサーの国見は、今回用いている技術について説明したうえで、次のようにアピールしました。
「まず形状を3Dスキャナで読み取ります。次に8Kを超える9504×6336画素の静止画であらゆる角度から撮影し、それをもとに立体的なCGを作る「フォトグラメトリ技術」でCGを制作します。実際の本堂はガラスで保護されていますが、外観から堂内装飾まで詳らかに鑑賞いただけます」
実際に金色堂に足を運んだことのある人でも、最新のデジタル技術との掛け合わせで初めての体験ができる今回の企画展。来年の会期が待ち遠しいですね。
「特別展『中尊寺金色堂』」が東京国立博物館本館特別5室で2024年1月23日(火)〜4月14日(日)に開催。
[開催概要]
建立900年 特別展 「中尊寺金色堂」
場所:東京国立博物館本館特別5室
日時:2024年1月23日(火)〜4月14日(日) 月曜、2月13日休館
主催:東京国立博物館、中尊寺、NHK、NHKプロモーション、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
後援:天台宗、岩手県、平泉町