写真展「田沼武能 人間賛歌」が、東京都写真美術館(東京・恵比寿)地下1階展示室で、6月2日(金)から7月30日(日) の日程で開催中です。未発表最新作「武蔵野」を初公開するとともに、ヒューマニスティックなまなざしで人間のドラマを描き続けてきた田沼の70年を超える写真家としての軌跡を辿ります。
田沼は、東京写真工業専門学校(現・東京工芸大学)卒業後、木村伊兵衛に師事、『芸術新潮』の嘱託写真家として芸術家や文化人を撮影し、その後はタイム・ライフ社の契約写真家となるなど、フォトジャーナリズムの世界で華々しい活躍を展開しました。
1972年からはライフワークとして世界の子供たちを撮影、黒柳徹子ユニセフ親善大使の各国訪問に私費で同行取材を行い、生涯で130を超える国と地域に足を運びました。
田沼は国内外で精力的な取材活動を展開、自身の作品を発表し続け、その旺盛な好奇心と行動力は生涯衰えることはありませんでした。
その一方で、母校・東京工芸大学で後進の指導にあたり、日本写真家協会会長、 日本写真著作権協会会長、日本写真保存センター代表など写真界の要職を歴任しながら、わが国の写真文化の普及啓発や写真の著作権保護にも力を注ぐなど大きな役割を果たしました。
第1章「戦後の子供たち」
第1章「戦後の子供たち」では、生き生きとした子供たちの姿と、彼らが映す今は失われた昭和の日本の 姿を63点の作品を通して伝えます。
自身も思春期を戦時下で過ごし東京大空襲で凄惨な経験をした若き日の田沼は、生まれ育った下町で終戦後の東京で生きる子供たちの姿を活写しました。
田沼は著書の中で「子供は地球の鏡であり、 歴史の鏡であり、時代の鏡である」という考え方を示しています。戦後の荒廃した日本で強く、たくましく生きる子供たちの姿とそのまなざしは、観る者を魅了する力強い生命力を感じさせます。
第2章「人間万歳」
第2章では、85点の作品を通して、田沼を魅了してやまなかった世界の子供たちや世界の人々のまなざしに触れます。
何よりも人間の「生きる姿」に興味を持った田沼は、生涯のライフワークとして世界の子供たちをはじめ世界の人々の写真を撮影することに注力しました。
1975年以降は発展途上国の子供たちにも目を向け、1984年からは黒柳徹子ユニセフ親善大使の緊急援助国訪問に毎年自費で同行取材を行いました。
この同行取材は、新型コロナウイルス感染症拡大により海外渡航が制限される前年の2019年まで35年に亘り継続され、田沼は実に130を超える国々を訪問しました。
第3章「むさし野」
第3章では、田沼が撮影し続けた「武蔵野」シリーズより、本邦初公開の未発表作品を含む57点を展示します。
田沼は、多忙な海外取材の合間をぬって「武蔵野の自然」の撮影に取り組みました。戦後の高度経済成長の陰で急速に姿を変えようとしていた日本の原風景に目を凝らし、あらゆる季節の「武蔵野」の姿を生涯追い続けました。
東京の下町に育った田沼にとって、「武蔵野」に残る雑木林や野鳥の遊ぶ池、寺社などの姿が、心象風景としての「ふるさと」のイメージそのものだったのです。
「田沼武能 人間讃歌」は7月30日(日)まで開催中。
[開催概要]
「田沼武能 人間讃歌」
会期:6月2日(金)~7月30日(日)
時間:10:00~18:00 (木・金は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
会場:東京都写真美術館 地下1階展示室
休館:毎週月曜日 ※ただし7月17日(月・祝)は開館、翌7月18日(火)休館 料金:一般 700円/学生 560円/中高生・65歳以上 350円
※小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)、 年間パスポートご提示者は無料 ※オンラインによる日時指定予約を推奨
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館、朝日新聞社
特別協賛:キヤノンマーケティングジャパン(株)、東京工芸大学
協 賛:東京都写真美術館支援会員
協 力:(公社)日本写真家協会、(公社)日本写真協会、全日本写真連盟、(一社)日本写真著作権協会
公式HP https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4532.html
展覧会担当:関次和子 、石田哲朗 (東京都写真美術館 学芸員)