AKASE株式会社の自社ブランド「マスタウォール」から、小林幹也デザイン「YU(ユー)」シリーズの新作が発表に。その内覧会がマスターウォール青山で開催されました。
「YU」シリーズは、それまでウォールナットの素材感と直線的なデザイン主体の同社にあって、“優”しさを追求したシリーズ。今回も、家具単体の意匠よりも、小林が常に口にする“空間や暮らしの中の佇まいや居心地”に留意した製品がラインナップされています。
UC1、UT1など既発売のダイニング系の製品に、今回リビングシーンが加わったことで、家での「居心地いい暮らし」という本来のコンセプトは一層明確になったように思います。
US1 ソファ 4月発売予定
「US1」は、2017年「YU」シリーズのプロジェクト開始時から構想はありつつも製品化が叶わなかったリビングシリーズの目玉。
「他社との差別化を図ろうと個性を出しすぎると、空間には馴染みにくくなります。極力シンプルなものを提案したいんです。今回のデザインも、コの字型のシェルの間に厚みのあるクッションが載っているだけ」
そう小林は言いますが、背に行くほど絞られるフォルムは0.5度単位で試作を繰り返して決定、丸みを帯びた背クッションコーナー周りの曲面で構成する処理もソツがありません。
この日会場に展示されたモックは、広報写真で見るよりたっぷりしており、座るといい塩梅で沈み込みます。近時クッションの技術が格段に向上しソファ主体となった同社の良さが味わえます。ローソファの座面は40cmが平均的ですが、US1のそれが42cmとなっているのは、その沈み込みを考慮してのこと。
両サイドのクッションはちょっとした昼寝の枕にもなるソフトな感触とサイズ感です。
注目は、オプション。
サイドテーブルはソファ差し込み式の専用品で、サイドテーブル用の脚の床スペースを節約できる優れもの。リビングのローボードと異なり、ホームシアター鑑賞中ドリンクを口にする都度前屈みになる必要もありません。
ヘッドレストも差し込み式で、ソファの幅にピッタリ合わせた専用の4種類を用意。背面から見ても後付けしたような金具も見えません。何より座るとラウンジチェアのようにたっぷりと包み込まれ座り心地が増し、ホームシアターユーザーには必須の仕様といえるでしょう。
UT7 リビングテーブル 4月発売予定
お皿のような4mmのリムが特徴のリビングテーブルは、反らないように試作を重ねて完成させた力作。座卓のように使って子どもがお絵描きするイメージも浮かび微笑ましい製品です。
UT2 ダイニングテーブルとレッグス 3月発売予定
既発売のダイニングテーブルUT2の木部デザインをスチールで再構築。スチールにすることで従来より細くできました。下を斜めに絞り込んだ天板と相まって、さらにスリムな印象です。
「テーブルは空間に占める面積も大きいですし、四角いダイニングテーブルは視覚的な痛々しさがあります。でもダイニングチェアが奥に収まることで空間に対する圧迫感や野暮ったさは軽減されます」
黄色亜鉛というメッキ色は、ドイツのデザインブランドe15(イーフィフティーン)がやっていて小林は以前より注目していたといい、オーク天板によく合います。
USB2 カップボード 4月発売予定
USB2カップボードは、作り付けのシステムキッチンでは足りない分を補うという用途もありますが、サイドボードとしてバッグや本など、ちょっとした日常の細々したグッズを整理するのにも活用できそう。
小林が「キャビネットに寄せた食器棚」というのはその通りで、幅のバリエーションによって書斎やベッドシーンにも幅広くマッチしそうです。
取材・写真・文:遠藤