山中貞雄監督へのオマージュ、りんたろう最新作「鼠小僧次郎吉」

⻑編商業アニメーションにスポットを当て、⻑編アニメーション映画のコンペティション部門をもつアジア最大の祭典として新潟から世界へアニメーション文化を発信する映画祭『新潟国際アニメーション映画祭』が3月17日より22日に開催されます。このたび、りんたろう監督最新作『山中貞雄に捧げる漫画映画「鼠小僧次郎吉」』のワールドプレミア上映が決定しました。

©️山中貞雄 / 「鼠小僧次郎吉」製作委員会

本作品は、日本映画黎明期にサイレントからトーキー初期に掛けて活躍、その後28歳の若さでこの世を去った映画監督・山中貞雄が生前に遺した「鼠小僧次郎吉ー江戸の巻」を、りんたろう(『銀河鉄道999』、『幻魔大戦』、『メトロポリス』)がサイレントアニメーション化したもの。実に14年ぶりの新作です。

 

この今までにないユニークな映像制作には、フランスを代表する新鋭Miyu Productionsが共同制作として参加。キャラクターデザインに『童夢』『AKIRA』の大友克洋、音楽にはサキソフォーン奏者・作曲家の本多俊之(『マルサの女』『メトロポリス』)、サイレントアニメーションに彩りを添える弁士役を『Dr.スランプ アラレちゃん』則巻アラレ役の声優・小山茉美が務めるなど、豪華な布陣も注目です。

りんたろう監督がコメント「『人情紙風船』が遺作ではちと寂しい」

本作品の主人公は、大富豪から富をいただき貧しい庶民にばら撒く義賊、ご存じ鼠小僧次郎吉。夫に先立たれ、小さな我が子と辛い日々を送る町人お鈴。そんなお鈴を利用して鼠小僧の正体を暴こうとする梵字安五郎と長五郎。罪を憎んで人を憎まず、経験と勘で補物名人と謳われる岡っ引き勘右衛門。江戸の街を舞台に繰り広げられる哀愁を誘う人間ドラマ。

 

映画監督山中貞雄はそんな夢をみています......。

 

りんたろう監督は、次のようにコメントしています。

 

「[ ロング ロング アゴー ]

長い顎に無精髭、頭に手ぬぐいを巻き、薄っぺらな下駄履きという風貌でサイレントからトーキー時代の映画界を28歳という若さで駆け抜けて逝った映画監督・山中貞雄。その名前を知ったのは私が石ノ森章太郎『佐武と市捕物控』のTVアニメ作品を作っていたときだった。

初の時代劇アニメということでサイレント時代から活躍していた松田定次監督が監修としてアフレコに立ち会っていた。その松田氏から山中貞雄という監督の素晴らしさを聞かされたが作品を観る機会もないまま歳月が過ぎたころ、銀座の雑居ビルの地下にある並木座という名画座で山中貞雄監督作品『人情紙風船』に出会った。全編観る者に重苦しく迫ってくる悲壮感が漂う映画だったが、その物語を象徴するような紙風船が淡い光を帯びながら路地のどぶ川をゆっくりと流れ去っていく儚いラストシーンに心揺さぶられたまま映画館を出たことを今でも覚えている。

その後VHSやDVDが出たことで『丹下左膳 百萬両の壺』『河内山宗俊』を観ることができた。『丹下左膳 百萬両の壺』の軽妙洒脱な現代的なタッチで簡潔にまとめ上げた手腕に脱帽し、『河内山宗俊』の微に入り細にわたった山中のモダンな絵作りと人物造形の巧みさにどっぷりハマってしまった。

一方ノートの隅っこにパラパラ漫画を描いたり戯画を描いたりしていた山中の一面を知ったとき、仲間内からロングロングアゴーと呼ばれた長い顎と無精髭の人間・山中貞雄が一層好きになりいまに至っている。

ここに企画した短編アニメは山中貞雄脚本の『鼠小僧次郎吉 江戸の巻』を基に私たちチームが捧げる映画監督・ 山中貞雄へのささやかなオマージュです。戦地で書き残した日誌に『人情紙風船が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ』と記した山中さんに私たちの作品を届けることができればチト嬉しいのです」

 

『山中貞雄に捧げる漫画映画「鼠小僧次郎吉」』は、3月20日(月)10:00〜新潟市民プラザで上映されます。

[作品概要]『山中貞雄に捧げる漫画映画「鼠小僧次郎吉」』

(英語タイトル:Manga Cinema dedicated to Sadao Yamanaka“NEZUMIKOZO JIROKICHI”)

監督:りんたろう

キャスト;小山茉美(弁士役)日本/2023年/25分/制作会社スタジオM2・ジェンコ・Miyu Productions 

©️山中貞雄 / 「鼠小僧次郎吉」製作委員会

なぜ今の日本に国際アニメーション映画祭が必要なのか?

現在、アニメーションは日本を代表する文化となり、「アニメ」と呼ばれる日本の作品はいまや世界中のどこででも見ることができます。しかし、未来永劫アニメーション文化を維持するためには、文化価値の共有や作品への評価、人材やスタジオが持続する基盤を作る必要があります。

 

現在、アニメーション文化は、「商業」と「アート」、「国内」と「海外」、「専門家」と「大衆」に分断され、十分な力を発揮しているとは言えない現状があります。それを打破する中心的な役割を担おうとするのが「新潟国際アニメーション映画祭」です。

 

「新潟国際アニメーション映画祭」は、3月17日(金)〜22日(水) に開催されます。

 

[開催概要]

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」

英語表記:Niigata International Animation Film Festival 

主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会 

企画制作:ユーロスペース+ジェンコ 

特別協力:新潟市、新潟日報社、新潟県商工会議所連合会、燕商工会議所

後援:外国映画輸入配給協会

協力:新潟大学、開志専門職大学、JAM 日本アニメ・マンガ専門学校

協賛:NSG グループ

会期:3 月 17 日(金)〜22 日(水) 毎年開催 

上映会場:新潟市⺠プラザ、開志専門職大学、T・ジョイ新潟万代、シネウィンド 

イベント会場:新潟日報メディアシップ、古町ルフル広場、新潟大学駅南キャンパスときめいと 

公式サイト:https://niaff.net