「映画監督は作り続けないと真価を発揮できない」──「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2022」一般公開に先駆け上映会を実施

「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2022」合評上映会

文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2022」は、今年度の製作実地研修で完成した短編映画4作品を、2月17日(金)より角川シネマ有楽町ほかで上映します。このたび、完成した4作品の合評上映会が、一般公開に先駆けて東京・銀座の丸の内TOEIで実施されました。

舞台挨拶に登壇した岡本昌也、成瀬都香、藤本楓、牧大我の各監督をはじめ出演者らは、多くの観客を前に感激の様子。

 

冒頭、文化庁の山田素子参事官があいさつに立ちました。

 

「今年で17回目となりました本プロジェクトですが、日本映画界の次世代を担う映画監督の育成を目的とした事業でございます。本年度4名の監督の皆さまにおかれましては、脚本指導を受けることに始まり、撮影、編集と、映画完成までの一連の流れを、経験豊富なプロのスタッフと共同で行うことを通じて、多くの貴重な経験を得られたものと感じております。この4名の監督が、情熱をもって制作した個性豊かな作品がこのスクリー ンに映し出され、皆さまにご鑑賞いただける日を迎えられましたこと、大変うれしく感じております」

岡本昌也監督『うつぶせのまま踊りたい』

1本目の『うつぶせのまま踊りたい』の岡本昌也監督は、本作を描こうと思った理由について次のように説明しました。

 

「僕自身が突然、ここ(ステージ)から飛び降りたらどうなるんだろうとか、街中で叫んだらどうなるのかなとか、そういう子どもっぽい衝動にかられる時があって。自分の中に子どもが住んでいるのかなと思うことがあるんです。でも大人になるといろいろとまわりの人に助けてもらったりしながら社会性を獲得していく中で、この子どもの部分をなかったことにしたくないなと思って、映画にしたいと思いました」

 

メインキャストとなる福永朱梨、日下七海というコンビについては次のようにコメントしています。

 

「やはり二人じゃないとできなかったような曖昧さというか、『おとなこども』の季節みたいなもの、モラトリアムのようなものをちょっと俯瞰しながら、当時に戻って、思い切り演じてくださったので。その辺がとてもやりやすくて。お二人に頼んで良かったなと思いました」

 

本作で印象的な美しい撮影についても謙虚なコメント。

 

「自画自賛するようでしたけど、自分でもとてもきれいだなと思いました。ついていただいたカメラマンと照明さんが本当に素晴らしくて。うちの現場って、全員が意見をガンガン言い合う、全員が作家さんみたいな人たちの集まりで。わたしはこう思う、ダメだと思うという言葉が飛び交っていて。僕はその言葉をジャッジするだけでした」

成瀬都香監督『ラ・マヒ』

『ラ・マヒ』の成瀬都香監督は熱心なプロレスファンであり、自身もアマチュアプロレスでリングに立った経験もあります。

 

「わたしは2年前くらいにプロレスにドはまりして。今は追っかけをやっ てるんですけど、それまではひたむきに頑張るような主人公がそれほど好きではなかったんです。むしろ正反対のタイプの性格だったんで。でもプロレスを見たら若くてかわいい細身の女の子がレスラーとしてがんばっていたんですよ。そういうのを見ていて、なんでこの人たちは諦めずに何度も立ち上がるんだろう、ということに純粋に感動して。帰りの電車でボロボロ涙を流して。この感動ってなんだろうと思っていたんですけど、まず自分が映画を作りたいと思ったときに初めに思ったのが、頑張ってる人を 描きたい、それに合致するのがプロレスだと思いました」

 

タイトルに込めた意味は次のように明かします。

 

「本来はラ・マヒストラルという技の名前。スペイン語で“あっぱれな技”という意味で、登場人物たちにもあっぱれな人生を送ってほしいという願いを込めて、このタイトルになりました」

藤本楓監督『サボテンと海底』

『サボテンと海底』の藤本楓監督は、普段は美術スタッフや制作部などを担当。

 

「わたしが5分以上の映像作品を撮るのはこの作品が初でした。美術部としてCMに参加した時に、スタンドインという方を初めて見て。この人たちを主人公に映画を撮ってみたいと思っていたタイミングで、自分の参加した現場で宮田さんをお見かけして。ご本人に無許可で当て書きしてndjcに応募しました」

 

さらに大友一生、小野莉奈、若林時英という学生のスタッフ役の3名の役者についても当て書きだったと明かします。

 

「実はお三方も、勝手に当て書きさせていただいて。皆さんのお顔が頭に浮かんでいる状態で書いてオファーを出したら見事に出ていただけることになって。特別に演出をつけなくても、勝手にいい感じにしてくださるので。素晴らしかったです」

 

今後の展開について話題が飛ぶと、次のように意気込みを語りました。

 

「わたしはけっこう人よりジタバタしてきた経験があるという自信があって。失敗してきたことや恥ずかしいことも時間が経てば笑い話になるみたいなことをテーマに、これからも自分のネガティブな経験とかを作品に昇華させて、それを観て人が救われたり笑ってくれたらいいなと思っています」

牧大我監督『デブリーズ』

『デブリーズ』の牧大我監督はテーマ決めの経緯について、次のように明かします。

 

「もともとSFウェスタンの企画をしていたんです。ゴミのある惑星に降りたって脱出するというウェスタン物語だったんですけど、ndjcのためにそれを改良して30分で撮れないかなということになり、いろいろあってこうなりました。前回の映画のバジェットが5,000円。今回のようにこれだけの規模が大きい映画を作れる機会がなかなかないので、ならば普段は作らないSFがいいんじゃないかと思って」

 

一方、その脚本を読んだCM監督役の山根和馬はさらに経緯について次のように付け加えます。

 

「まず脚本を読んだら理解できなくて。これは監督に会いたいと思って会ったんですけど、もっと分からなくなって。それならもうやるしかないと思って。やって理解するしかないなと思いました」

 

カメラマン役の森優作も「牧監督のプロフィール写真がパンチありすぎて、どんな人なのかなと思ったんですけど、現場で会ってみたら人としてめっちゃ面白い人だなと。そこからは自分も楽しもうと思って、楽しめました」と続けました。

 

牧監督は今後の展開について次のように明かしてくれました。

 

「1ヶ月くらい籠ってて映画とかドラマを観ていたんですけど、妄想によって生じるロマンというか、露悪的じゃないですけど自分の失敗を笑いにするという、その3点セットで物を作りたいなと考えていて。直近で作りたいと思っているのが、クレイアニメと実写を織り交ぜて何か実験的なことができないかなと。そういうのを家で作ろうかなと思いますね」

「今回の貴重な経験を次なるチャレンジへ」

そんな4人の監督のあいさつを聞いていた西ヶ谷寿一スーパーバイザーは、次のようにエールを送りました。

 

「皆さんは一応、今日でひと段落ということですね。シナリオは自分ひとりでもできますが、映画をつくるというのは本当に大きなお金が必要となってきます。なので監督たちは本当に貴重な体験をされたと思っています。映画を撮る機会は貴重なものなので、一回撮った経験を次のチャンスに活かせるようにしておいていただけたらと思っております。これからいろんな人に出会うと思いますが、映画監督は作り続けていかないと真価を発揮できないと思うので、これからも作り続けて、次にチャレンジしていただけたら」

若手監督育成プロジェクト。修了者の長編劇場公開続く

「ndjc(New Directions in Japanese Cinema)」とは、次代を担う若手映画作家の発掘と育成を目的に特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO、理事長:松谷孝征)が文化庁から委託を受けて2006年度より運営する人材育成事業。

 

 優れた若手映画作家を公募し、本格的な映像制作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施するとともに、作品発表の場も提供しています。

 

これまでにも修了者の長編劇場公開が続いており、吉野耕平監督作『ハケンアニメ!』(22)、藤澤浩和監督作『ツーアウトフルベース』(22)、三宅伸行監督作『世の中にたえて桜のなかりせば』(22)、板橋基之監督作『Bridal, my Song』(22)、真田幹也監督作『ミドリムシの姫』(22)のほか、今年も松永大司監督作『エゴイスト』(23)、草苅勲監督作『死体の人』(23)の公開が控えています。

 

[上映スケジュール]

<東京>

期間▶2月 17日(金)~23日(木・祝) 連日18:30~

場所▶角川シネマ有楽町

舞台挨拶▶2月17日(金):映画パーソナリティの伊藤さとりと、ndjc2022監督4名によるトークセッション。

 

<名古屋>

期間▶3月10日(金)~16日(木) 連日18:00~

場所▶ミッドランドスクエア シネマ

舞台挨拶▶3月11日(土): 映画パーソナリティの松岡ひとみと、ndjc2022監督4名によるトークセッション。

 

<大阪>

期間▶3月17日(金)~23日(木) 連日18:00~

場所▶シネ・リーブル梅田

舞台挨拶▶3月18日(土):映画パーソナリティの津田なおみと、ndjc2022監督4名によるトークセッション。

 

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