Carl Hansen & Søn（カール・ハンセン&サン）が、復刻ではない完全な新作「VEGA（ヴェガ）チェア」の2023年2月頃の日本発売を発表。そのプレスビューが11月18日に開催されました。また同時にFoyer（フォイエ）シリーズの来春発売も明らかとなりました。

VEGAチェア

「VEGAチェア」は、デンマークの建築家ヴィルヘルム・ラウリッツェン(1894 -1984) が1956年にデザインした軽量でスタッキング可能なチェアで、2022年6月にデンマークのコペンハーゲンで発表・発売したもの。

本製品はもともと、1956年当初「Folkets Hus(人民の家)として竣工し、現在は市民に愛されるコンサートホール「VEGA」となった建物かぎりでデザインされたものでした。しかし2022年に創立100周年を迎えたVilhelm Lauritzen Architects(ヴィルヘルム・ラウリッツェン・アーキテクツ)とのパートナーシップのもと、カール・ハンセン&サンのデザインクラシックコレクションに加わりました。

座面と背もたれに施された緻密な張地が全体をほっそりと洗練された印象を与えますが、よりシンプルにオークの風合いを楽しめる張地なしの仕様も展開しています。

エレガントでありながら、どこか古き良き学校の椅子を彷彿させるノスタルジックな側面も感じさせる「VEGAチェア」。スタッキングできる機能性、バラエティあふれる張地、木製脚部の仕上げなどから、さまざまな用途が考えられそうです。

カール・ハンセン&サンCEOのクヌード・エリック・ハンセンは次のようにコメントしています。

「ヴィルヘルム・ラウリッツェンの建築とデザインは、デンマークの文化遺産と機能主義の表れの一部であり、その『VLA26 VEGAチェア』を世界中の方々に初めてご紹介できるのは大変に光栄です。カール・ハンセン&サンは、20世紀のデンマークの傑作を幅広く取り揃えています。ヴィルヘルム・ラウリッツェンの妥協のない美学とクラフトマンシップに対する妥協のないアプローチが見事にマッチしているのです」

ヴィルヘルム・ラウリッツェン・アーキテクツのアン・モラー・ソレンセンは次のようにコメントしています。

「『VLA26 VEGAチェア』はデンマークのデザインの最高傑作です。そこにはヴィルヘルム・ラウリッツェンの真髄が表れています。さりげなくシンプルで時代を超越した機能主義のデザインでありながら、非常に明確な個性があります。このチェアは、ラウリッツェンならではの妥協のないディテールと、均整のとれたフォルムで、座っているだけで心地よい気分にさせてくれます。カール・ハンセン&サンとのパートナーシップにより、『VLA26 VEGAチェア』が今やそれにふさわしい品質で生産に移されることを誇りに思います」

Foyerシリーズ

もうひとつ披露されたのが、ラウリッツェンが「Radiohouset（ラジオハウス）」のロビーのために製作したシリーズ家具「Foyer（フォイエ）」。こちらも6月にコペンハーゲンで発表・発売したもので、2023年春に日本で発売予定です。

「Foyerシリーズ」は、ベンチVLA75、ソファVLA77、ラウンジチェアVLA76で構成。いずれもオークのフレームと空間に浮かんだような布張りの座面や背もたれが特徴ですが、製品化に際してはレザーも選択可能です。

手作りのボタンを配した座面と背もたれの製作には職人の手間暇がかかっています。座面は木製のフレームにわずか数本のネジで固定されているといい、とくにアームレストと脚部は3つの部品を継ぎ目が目立ぬよう仕上げられています。

いい食と、音楽と。心豊かに暮らす上質な空間

このビューは招待客を変えながら、カール・ハンセン&サンジャパンオフィスの1階から3階を舞台に11月30日まで連日開催中です。

当日は、コンサートホール「VEGA」にちなみ、音楽をテーマにしたおもてなしも用意。ShinjiWakasaによるアンビエントな音楽、できたての京都の麩饅頭とともに、化学肥料や農薬を使わず京都の水だけで作る非加熱の香り豊かなボトル茶「toka_seisei（冬夏青青）」が振る舞われました。

また2階では、おなじみとなったＹチェアのウィービング実演。フレームにペーパーコードを巻き付ける作業で、訪問者が体験も可能。一台を一時間ぐらいで仕上げるようになるには熟練を要します。フレームが折れたりした場合はその部分だけ交換も可能で、一生ものとして長く使えるのも魅力。

1階では、水彩画を用いたというラウリッツェンへ思いを寄せながら水彩絵具で塗り絵する「Watercolour Painting Competition」も開催されました。

デンマークモダニズム建築のパイオニア、ヴィルヘルム・ラウリッツェン

デンマーク機能主義のパイオニアで、画期的な建築物を設計した国際的に知られる建築家ヴィルヘルム・ラウリッツェンは、建物から家具、ドアノブに至るまで、細部まで徹底的に考え抜かれた数々のモダニズム作品を生み出してきました。

「Folkets Hus(人民の家)」は、ヴィルヘルム・ラウリッツェンが設計し1956年に竣工、労働運動のための多目的集会場として誕生しました。ラウリッツェンは、椅子、テーブル、木製パネル、壁面の装飾、シャンデリア、備品、ドアハンドル、ソケットなど、あらゆるものを完璧なまでにデザイン。小さなディテールが空間全体に大きな違いを与えることを知っていたのでしょう。

（取材・会場写真・文：遠藤）