セイコーのメッセージ発信基地「Seiko Seed」オープン
セイコーウオッチは、時を知らせるだけではない腕時計の新たな魅力を発信する拠点として「Seiko Seed(セイコー シード)」を東京・原宿駅前にオープン。
さらに、そのオープニングを飾る展覧会「からくりの森」が、2022年10月20日(木)より11月6日(日)まで開催中です。
時を精確に刻むだけでなく、時代とハートを動かしたい
このたびオープンした「Seiko Seed」のSeedは、「Seiko Experience Engineering and Design」の略。たんなるショールームとも異なるこの場所は、時計の販売は行っていません。
時計の修繕と販売からはじまり、掛け時計、置き時計、腕時計の製造で140年の歴史を刻むなかで培った技術とデザインで、「精確な時を刻む」だけでなく「時代とハートを動かす」セイコーを発信していきたいという意気込みが表れたイベントルームといえるでしょう。
オープニングを飾る第1弾は「からくりの森」
その企画第1弾が、展覧会「からくりの森」。明日10月21日より30日まで開催されるデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2022」の公式プログラムにもなっています。
インスタレーション「時計仕掛けの森」
ひとつめの作品は、インスタレーション「時計仕掛けの森」。会場入って左の暗室の中に施されています。
時計の内部にあり普段は見ることのできない機構を、後ろから文字通り「光を照らす」ことでプロジェクション映像のように大映しし、同時にサウンドも腕時計が発する音で再現した空間インスタレーション作品です。
セイコーには、メトロノームウオッチという2つのモーターを搭載したモデルがあります。これを利用して、影絵を動かしてみてはどうかとセイコー社内で出たアイデアをベースにしているとのこと。
また、セイコーは障害のある人のための時計を長年作り続けていますが、その中に、時をデジタル音声で知らせるモデルがあります。こうしたモデルは、人の声が聞こえやすい帯域(3000Hz前後)にチューニングしてありますが、今回の展示のために鳥の鳴く声や時計のコチコチという音などを再生できるようチューニングし直して再生してはどうかというアイデアを採用。
デザインディレクターの桐山登士樹のアドバイスを得て、それを曲面の壁面に映し、いちどに全部見せたり、一瞬だけ見えたりといったシーンを両立することで、たくさんの影絵をひとつの物語として見せています。
この作品を作るにあたっては、からくり時計らしさを再現するため、技術的には滑らかに動かすことができるムーブメントをあえてカクカクさせるなど、『デザイン あ展』のカワクボリョウタの要求を反映することで、大幅に作品クォリティーが上がったのだそう。
インスタレーション「時計の捨象」
もうひとつは、3作品で構成されるインスタレーション「時計の捨象」。
東京2020オリンピックの聖火台を手掛けたnomena(ノメナ)の代表・武井祥平が、小さなメトロノームウオッチの機構を手のひらに載せて電池と繋いだだけで虫のように繊細に動くさまを目の当たりにし、その脅威に突き動かされて企画したものです。
ひとつは、その“生命力”を表現すべく、水に浮かべてムーブメントが水を掻く、時を刻まない時計。
そして、60のムーブメントを並べ、まるでシンクロナイズドスイミングのように振付をするダンスする時計。
さらに、音声時計を讃えるように、障害者に寄り添い続けたセイコーウオッチのこらまでの姿勢のように、森全体を優しく包み込む雨の情景をイメージした作品が展示されています。
こうした背景を知って体験すると、きっと感動すること請け合いです。
東京・原宿駅すぐのWITH HARAJYUKU(ウィズ原宿)1階「Seiko Seed」にて、「からくりの森」は11月6日まで開催中。
(取材・撮影・文:遠藤)