実は反主流派──フィン・ユールとデンマークの椅子を学ぶ

東京都現代美術館企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」

東京都現代美術館で開催中の企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」が2022年10月9日(日)に終了します。

フィン・ユールといえば、北欧デンマークの家具の中でも優雅な直線を特徴とする椅子が思い浮かびます。実は当時の家具デザイナーたちの多くが家具の専門学科や家具工房の出身であるのに対し、フィン・ユールは美術史家になることを夢見ながらも「それでは生計が立てられない」と父親に反対され、アカデミーで建築を学び、家具デザインはほぼ独学という異色の経歴を持っています。それゆえ実はデンマーク家具業界内でも反主流派で、1950年以降むしろアメリカで評価されたのです。

 

岐阜・高山にフィン・ユール邸で体感できますが、フィン・ユールはアルネ・ヤコブセンとは真逆の、生活空間ありきの外装設計を心がけたといいます。それゆえ身体を抽象化したようなやわらかなフォルムは座って心地よいばかりでなく、彫刻作品にも似た静謐な存在感を放ち、建築や美術、あるいは日用品と濃密に響き合いながら、空間の調和を生み出す役割をも果たしているようです。

 

この展示会は、フィン・ユールだけでなく、デンマークの家具デザインの歴史と変遷を辿るとともに、新しい生活様式の下で、普段からわたしたちが触れて、支えてもらう日常的な椅子のあり方にあらためて光を当てるものといえるでしょう。

東京初上陸!織田コレクションを一堂に

展示はまず、フィン・ユールのみならずデンマークの椅子を通して、北欧デザインに通底する魅力を目で見て学びます。

 

そのなかには、北海道東川町が所蔵する織田コレクションが含まれます。旭川などではお目にかかったことがあれど、東京でこれほどの数をまとめて見ることができるのは初の機会とのこと。

織田コレクション(東川町) 撮影:大塚友記憲

さらに、こうした椅子を実際に座って体感するコーナーも。金具などが当たらない椅子に優しい服装で足を運ぶことをオススメします。

 

「フィン・ユールとデンマークの椅子」展は、東京都現代美術館で10月9日(日)まで。

©東京都美術館

[開催概要] 

「フィン・ユールとデンマークの椅子」

会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C

会期:2022年10月9日(日)まで

開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)

観覧料:一般 1100円 / 大学生・専門学校生 700円 / 65歳以上 800円

※高校生以下は無料 

※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料

※いずれも証明できるものをご持参ください

※特別展「ボストン美術館展 芸術×力」のチケット(半券可)提示にて、各料金より300円引き

※10月1日(土)は「都民の日」により、どなたでも無料

※事前予約は不要ですが、混雑時に入場制限を行う場合があります。

主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館

後援:デンマーク王国大使館

特別協力:北海道東川町、織田コレクション協力会、旭川家具工業協同組合、デンマーク・デザイン・ミュージアム、ヴィルヘルム・ハンセン財団

協力:Onecollection A/S / House of Finn Juhl、デニッシュインテリアス株式会社、カール・ハンセン&サンジャパン株式会社、フリッツ・ハンセン、スカンジナビアンリビング、ルイスポールセンジャパン、レ・クリント

学術協力:織田憲嗣(東海大学名誉教授)、多田羅景太(京都工芸繊維大学助教)

助成:公益財団法人花王芸術・科学財団、公益財団法人朝日新聞文化財団

お問い合わせ:東京都美術館 03-3823-6921

 

(資料提供:公益財団法人東京都歴史文化財団)