アート&デザインで紐解く「サーキュラーシティ丸の内 ゴミ=資源 循環のデザイン」
SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれる昨今、ゴミ問題について日本経済の最前線ではどんな取り組みがなされているのか──それをうかがい知ることができる興味深い展示会が、公益財団法人日本デザイン振興会(JDP)の運営する東京・丸の内のギャラリー・スペース「GOOD DESIGN Marunouchi」で9月20日まで開催中。東京・丸の内を舞台とした持続可能な資源循環の取り組みについて、アートとデザインを通じて紐解く「サーキュラーシティ丸の内 ゴミ=資源 循環のデザイン」です。
日本経済の発信地のウラガワを知る
多くの大企業が本社を置くオフィス街・大丸有エリア(大手町・丸の内・有楽町の丸の内エリア)は、ある意味、大量消費・大量生産の発信基地といえます。しかしそんな場所で30棟ものビルを管理する三菱地所が裏で進めていたのが、「サーキュラーシティ丸の内」という、循環社会実現プロジェクトです。
その内容は、Reduce、Reuse、Recycleの「3R」はもちろん、シェアリングや、可能な限りのアップサイクルなどを店舗単位でなくエリア全体として取り組もうというもので、2030年までに廃棄物再利用率100%の達成と排出量20%削減を目標にしているというから驚き。
しかも、三菱地所株式会社 管理・技術統括 管理企画ユニット 統括 瀬川真理子さんによれば、生ゴミと可燃ゴミ以外はすでにほぼ100%再生を実現できているというのです。「三菱地所と次にいこう。」の標語は伊達じゃない。
キッカケは、残飯持ち帰りプロジェクト「TO GO」
会場では、そうした取り組みの実例が壁面のグラフィックのほか、対応する8つの展示台を通じて紹介されています。
なかでも興味深いのは、「MARUNOUCHI TO GOプロジェクト」。丸の内エリアには多くの飲食店があることから、食べ残しを持ち帰ってもらおうと、三菱地所の瀬川さんは、デザイナーの廣村正彰さんに紙バッグのデザインを依頼したのです。
「残り物を持ち帰るのは、欧米では普通ですが、日本人は恥ずかしがるところがあります。むしろそれが“クール”だと思ってもらいたい」(瀬川さん)
依頼を受けた廣村さんは、「それならいっそ、丸の内のゴミ問題全般をプロジェクトにしてみてはどうだろう」と、この企画展を思い立ったのです。
デザインにアートは必須
また今回の展示では、「デザインとアートは一体」という視点からアーティストも参加。「ゴミ=資源」の視点からリサイクルセンターや塵芥室で捉えた映像や音をモチーフにした表現「FOCUS ON CYCLE」(2022)も展開されています。
起用されたのは、「東京フォトグラフィックリサーチ(TPR)」所属の3名。2022年2月1日から5月31日までで306のアーティストと5302人の利用者を集めた「有楽町アーバニズムプロジェクト(YAU)」の実績を踏まえ、三菱地所株式会社 サステナビリティ推進部 井上成さんが依頼しました。
小山泰介さんは、人が手で分別する作業など、ダイナミックな「循環のスタート地点」を活写。
山本華さんは逆に、素材のディテールに迫ることで、ゴミなのか資源なのか一見して分からない曖昧な“分水嶺”を表現。単なるドキュメンタリーに寄らない作品を提示しました。
会場には、リサイクルセンターや塵芥室で集音した音や自宅に持ち帰った圧縮されたプラスティックで鳴らした音などを素材にした梅沢英樹さんのサウンドも流れています。
無数のペットボトルとトイレットペーパーに囲まれた「GOOD DESIGN Marunouchi」をぜひ体感してみて。
(取材・写真・文:遠藤)
[展示会情報]
「サーキュラーシティ丸の内 ゴミ=資源 循環のデザイン」
会期:2022年9月20日まで 11〜20時
場所:GOOD DESIGN Marunouchi 東京都千代田区丸の内3−4−1新国際ビル1F
入場無料
主催:公益財団法人日本デザイン振興会